「良い経営を、そのままコピーする」。経営テンプレ実践会は、20年で1,000回以上の勉強会を開いてきた参謀BARが、伸びている会社のやり方を選び抜き、すぐに実装できる形で届ける新しい場です。記念すべき第1回のテーマは「経理」。講師は、飲食店DXや商業施設のデジタル化を手がけ、IPOに挑戦中の株式会社favy代表・髙梨社長です。

なぜ第1回が「経理」なのか

経理はどの会社にも必ずある業務です。だから真似しやすく、効果も数字ではっきり出ます。さらに、経理の定型業務をAIに任せる考え方は、そのまま他の部署にも応用できます。社内の業務改善を始めるきっかけとして、最初のテンプレに経理を選びました。

もうひとつの理由は再現性です。今回の仕組みを作ったのは社長でもエース社員でもなく、経理部門でいちばん若手のメンバーでした。「AIで自動化していいよ」と任された担当者が、自分で組み上げたものです。

成果:7名→3名、月次決算は10日→7日

・人件費(給与ベース)は月約410万円から約300万円削減。上位4名分のポジションが不要になった ・各部署にいた経理アシスタント的な役割も不要になり、実際の効果は「7名→3名」以上 ・月次決算は10日→7日。社内の締切日を前倒しすれば5日も可能な状態 ・監査法人と証券会社のチェックを通った、IPO水準の精度を維持 ・その後さらに2名体制で回るようになっている ・追加費用はClaude(月100ドル)とMac mini 1台(約8万円・購入時のみ)だけ

経理担当者が急にいなくなっても処理が止まらなくなったことも大きな変化です。「一人経理」のリスクを抱える中小企業にとっては特に意味があります。

背景:世界の成長企業はすでに動いている

Microsoftの8,750人、Metaの1万4,000人、Amazonのコーポレート部門1万4,000人など、業績の良い企業ほど人員を減らし始めています。日本でも新卒採用を絞る大企業が出てきました。AIの実用性が急速に上がり、ホワイトカラーの仕事の組み立て方そのものが変わりつつあります。この流れに乗らない理由はない、というのが髙梨社長の問題意識です。

仕組みの全体像

データを集める(SaaSが担当) 銀行明細はマネーフォワードの標準連携で取り込み。領収書・カード明細・請求書はバクラクの経費精算と請求書受取に集約しています。紙の請求書が残る場合は、郵送物をPDF化してくれるatenaを使っていました(現在は全取引先がデータ送付になり不要に)。SaaSを使っていなくても、ExcelやスプレッドシートをAIに読ませれば同じことができます。
AIが仕訳する(Claude Coworkのスキル) 毎朝6時にAIが未処理の請求書を1件ずつ確認して仕訳し、毎朝8時に全銀行口座の明細を仕訳します。判断できないものや請求書と金額が合わないものだけを経理メンバーに通知。「次はこう処理して」と毎日教えることで、通知はどんどん減っていきます。スキルは10〜11個に分かれています。
人が確認して承認する AIの処理が終わると完了報告が届き、人はマネーフォワードの画面で内容を確認して承認ボタンを押すだけです。人が承認しているのはIPO対応のためで、一般的な会社であればここもAIに任せられる水準だといいます。
AIが分析して報告する 会計データをAIがダウンロードし、予算に対するコスト超過を部署ごとに検知してマネージャーに削減を促したり、売上の弱い部署を洗い出したりしています。

経理の「催促業務」もAIが引き受ける

経費精算の未申請を部署ごと・個人ごとにAIが集計し、Googleチャットで自動通知しています。締切翌日には再集計して「〇件減りました」と変化まで報告。何度でも送れるので、若手経理が一人ずつ声をかけて回る仕事は完全になくなりました。社長自身の名前も「交通費3件未申請」と容赦なく挙がるそうです。

固定資産台帳もバイブコーディングで自作

店舗や施設を自社で作るfavyでは、固定資産の計上が多く発生します。「取得総額に付随費用を按分する計算システムを作って」とAIに指示するだけで社内ツールができ、監査法人からもOKが出ています。

導入するときの4つのポイント

AIはチームプランで契約する ClaudeでもChatGPTでも、チームプランなら会社のデータが学習に使われません。個人・無料プランは避けてください。
AIに専用アカウントを1つ渡し、承認・削除の権限は与えない 「これはやってはいけない」と指示で縛るのではなく、SaaSの権限設定でできなくするのが安全です。人と同じで、AIも約束を破ることがあるからです。
AI専用のMacを1台用意する Claude in Chromeを使い、AIがブラウザでバクラクやマネーフォワードにログインして、人と同じ画面・同じ経路で作業します。24時間動かすので専用機が必要です。経理データへの入口になるため、パスワードを設定し、触れる人を限定してください。
処理の時間をずらし、毎日タブを閉じさせる 複数の処理が同じ時間に重なると待ちが発生するので、1時間ほど間隔を空けて設定します。成功も失敗も必ずチャットかメールで報告させ、作業後はChromeのタブを全部閉じるようスキルに書いておきます(テンプレには組み込み済み)。

AIのマネジメントは若手社員の育成と同じ

「AIのマネジメントは、若手社員のマネジメントとほとんど変わらない」と髙梨社長は言います。人に教えるのと同じように作業を教え、できるようになったら「この流れをスキルにまとめて」と頼む。それだけで毎日動く仕組みができあがります。

テンプレの使い方

会員の方には、実際に使われているスキル一式(ID等は伏せた版)をお渡しします。Claudeにファイルをアップロードし、ログインIDや利用ツール名など自社に合わせた部分を直すだけで動かせます。

自社だけで進めるのが難しい場合は、この仕組みを実際に作ったfavyのメンバーが伴走する実装支援も用意しています(目安1〜2か月・月額100万円)。

まとめ

日常業務はAIに一次処理させ、人は最終承認と例外対応に集中する。承認権限をシステムで分けることで、AIに任せる範囲を安全に広げられる。経理から始めたこの型は、会社中の業務に広げていけます。